第六話

雨がザーザーふってきて

 お待たせしました
学男君のこととなると
書いても書いても書き足りません
おかげでこんなに長くなりました。
ただしうそは書いていません
しかし修飾していない文章も一行たりともありません。
真実の学男に近いせんで書きました。
長いけどがまんして読んでね。
次は 市場君お願いします
長い後なので出来れば5行以内でお願いします。書きたければ別ですが。
        宮奥 誠

雨がザーザーふってきて

     第6話

学男がとった電話の向こうから

あの好伸先輩の声が聞こえてきた

酒やけした独特の低い声で直ぐにわかった。

「学男、おまえの家が火事だ。」

「えっ、またですか〜。」

「ともかくすぐに帰ってけえや。」

「はい分かりました。」

そう、学男には亡くなった両親から遺された

今は誰も住んでいない出口町の家があった。

数年前に隣家からの火事の延焼で一部焼けてしまった

しかしそのおかげで保険会社からまとまった額の保険金がおりてきた。

服も買った、靴も買った、ほしかったテニスラケットも買った、
それでもお金があまるので白のセルシオまで買った。


俗にいう「火事ぶとり」というやつだ。

ただ「火事ぶとり」は自身の体重にもおよんでしまった。

ピーク時には112キロにも達してしまった。

今は多少ダイエットの結果がでたもの

先日もあるま先輩に

「学男、今100キロこえとろう?」

そう聞かれたときに

「えっ、99キロしかありませんよ。」

「お約束」な答えをしてしまった自分が少し悲しかった・・・・・

ともかく日本に帰らなくては

部屋に帰った学男はすぐに電話で明日の還る便の予約をいれた。

明日の午前中の便がとれると

安心感と普段飲まないお酒のせいで

シャワーも浴びずにそのまま寝入ってしまった。

夢をみていた・・・・

親子三人で暮らしていた出口町の家があった。

その家から小学生の自分が「いってきまーす。」と

額に一万円札をはり付けて飛び出してきた。

そのまま近くの駄菓子屋に走りこんだ学男は

「おばちゃん、仮面ライダースナックをひとケースちょうだい。」

「えっ、またひとケース、中のライダーカードだけとって
スナックを捨てたらいけんよ。」

「うん、わかった。全部食べるよ。」

「黒猫のタンゴ」を歌った「皆川おさむ」に似ている愛くるしく
無邪気に見える笑顔で答えた。

学男はバアサンだろうが若い娘さんだろうが、
女を騙すことは子供の頃から得意だった。

学男のめあては、中身の仮面ライダーカードと、その当たり
カードでもらえる特性カードホルダーだった。

近くの路地裏で袋のひとつひとつからカードを抜き取ると、
お尻のポケットにおしこんだ。

カードを抜き取った袋をダンボールケースに押し込むと

学男は芦田川に向かって駆け出した。

橋の上に立っていた

抱えていたダンボールケースを下の河面に投げ落とした。

水面に当たったひょうしにケースのふたが開いて中の
仮面ライダースナックが河面に2メートルの円を描いて浮いていた。

そのまずさに定評があった仮面ライダースナックには魚もよってこなかった。

ふっと、誰かの視線を感じた。

向こう岸にその場面にいなかったはずの母が立って学男を見つめていた。

あっと、まばたきをした瞬間母は目の前に立っていた。

何も言わずに微笑みかける母のその目だけが悲しげだった。

その目を見たとたん、学男の目からも涙が溢れてきた。

「お母ちゃん。」

そうつぶやいた時に目が覚めた。

ベッドの上に起き上がりながら学男はほほが濡れているのに気づいた。

「人間って夢の中でも泣けるんだ。」

学男は変なことに感心した。

母が死んだのは4年前だった

入院して3日目の朝のあっけない最期だった。

その10ヶ月前には父が他界した。

一年の間に相次いで両親をなくした学男だった。

父の死に際しては人前で泣かなかったのに

母の死んだ日から3日3晩泣きつづけた。

4日目の朝にまがぬけた呉服屋がやってきた

母の着物が仕立てあがったと嬉しそうに広げて見せた。

それはどうみても年増の演歌歌手のステージ衣装だった。

学男は芝居がかった口調で

「こんな着物持って帰ってくんな、袖もとおしてないんじゃ形見にもなりゃしねえ。」

狼狽している呉服屋に押し付けるようにして着物は持って帰らした。

結局、お金は一円も払わなかった。

学男の血液型は典型的なAB型だった。

情緒的だが合理的、計算は苦手だが打算的、早い話博打はすきだがけちだった。

そのことがあってから学男は泣かなかったのに

「100萬$の夜景」は涙腺をゆるくするらしい。

誰もいない部屋で学男はポツリとつぶやいた。

「誰も待ってないけど府中に帰らなくちゃ。」

立ち上がって窓のカーテンを開けた。

外には雨がザーザーふってきていた。

学男はもう一度つぶやいた

「帰らなくちゃ。」


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